展示会が終わると、名刺が手元に残ります。数百枚あっても、そのあとの連絡が続かず、商談にならないまま終わってしまう会社は少なくありません。理由の多くは、名刺を全部同じ扱いにして、電話をかけるか、お礼メールを一斉に送るかの二択で考えてしまうことです。
この記事は、展示会で集めた名刺を「会話した相手」「名刺だけの相手」「来場していない対象企業」の3つに分け、それぞれにメール、お問い合わせフォーム、電話のどれを使うかを説明します。名刺にメールアドレスがない相手には、その会社のお問い合わせフォームから連絡できます。名刺を渡してくれた相手にメールを送ってよいかという法律の話も、条文とガイドラインで確認しました。
| 名刺の区分 | 最初の連絡 | 反応があったあと |
|---|---|---|
| A. 会話した相手 | 翌営業日までに、会話の内容に触れた個別のメール | 電話で日程を決める |
| B-1. 名刺だけの相手(メールアドレスあり) | 2営業日以内に、出会った場所を書いたメール | 返信・クリックのあった会社に電話 |
| B-2. 名刺だけの相手(メールアドレスなし) | 会社のお問い合わせフォーム | 返信・クリックのあった会社に電話 |
| C. 来場していない対象企業 | 出展者・来場企業のリストから、お問い合わせフォーム | 返信・クリックのあった会社に電話 |
電話の中身(かける相手、話し方)は、フォーム→メール→電話の3段で営業リストを使い切る方法に書いています。この記事は、その3段の組み立てを、展示会の名刺から始める場合の使い方です。
展示会のあと、名刺のフォローが止まる理由と、先に決めること

展示会のフォローが止まる場面は、だいたい3つに分かれます。
- 誰がいつ連絡するかが決まっていない。展示会の翌日から通常の仕事が始まり、名刺の整理が後回しになります。
- 名刺を全部同じ扱いにしている。ブースで30分話した相手と、パンフレットを取るために名刺を置いていっただけの相手に、同じお礼メールを送っています。
- メールアドレスがない名刺を、そのまま置いている。名刺に電話番号と住所だけが載っていると、電話以外の手段がなくなります。
展示会に出る前に決めておくのは、次の3点です。当日のブースで名刺にメモを書く運用も、この3点が決まっていないと意味が薄くなります。
- 名刺の区分と、連絡手段を決める。この記事の表のように、会話の有無とメールアドレスの有無で分けます。
- 連絡する日を決める。A は翌営業日まで、B と C は会期後1週間以内を目安にします。
- 担当者を決める。メールを送る人と、電話をかける人を分けておくと、反応があった相手への電話が遅れません。
展示会の費用そのものを1商談あたりで見直したい場合は、営業代行の費用比較の「1商談あたりのコストで比べる」の節を見てください。そこでは、出展費200万円、名刺200枚から商談15件という仮の数字で、1商談あたり約13万円と計算しています。名刺からの商談数が増えるほど、この金額は下がります。
名刺を3つに分ける|会話した・名刺だけ・来場していない対象企業

展示会が終わった日の夜に、名刺を次の区分に分けます。名刺の裏か、スキャンしたデータのメモ欄に、A・B・C のどれかを書きます。
A. 会話した相手
ブースで製品やサービスの説明をした相手、質問を受けた相手、資料を渡した相手です。会話の内容を一言メモしておきます(「導入時期は来期」「人手不足で相談」など)。このメモが、後の連絡で一番効きます。
B. 名刺だけの相手
資料を取るため、抽選やアンケートのために名刺を置いていった相手です。会話がないので、こちらから「どこで会ったか」を伝える必要があります。B はさらに、名刺にメールアドレスがあるか(B-1)、ないか(B-2)で分けます。
C. 来場していない対象企業
名刺は持っていないが、自社の見込み客にあたる会社です。展示会の公式サイトに載っている出展者一覧や、同じ業界で来場した企業から、リストを作ります。ここは名刺ではなく会社のリストが出発点で、連絡手段はお問い合わせフォームになります。
C のリストは、展示会が終わってから作る必要はありません。出展している間に、出展者一覧や自社の顧客リストから候補を挙げておけます。リストの作り方は、お問い合わせフォームがある会社だけで営業リストを作る方法に書いています。
名刺を渡してくれた相手にメールを送ってよいか|特定電子メール法で確認する

メールで連絡する前に、法律の決まりを確認します。ここでは、条文と、総務省・消費者庁が出している「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」(平成23年8月改正。両省庁のページに載っている最新の版)に書かれていることだけを書きます。個別の事案への当てはめは、弁護士などの専門家に相談してください。
広告・宣伝のメールは、原則として同意した人にしか送れない
特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)は、営利を目的とする団体や、営業を営む個人が、自分や他人の営業の広告・宣伝のために送る電子メールを「特定電子メール」としています(第2条第2号)。第3条第1項は、次に挙げる人以外には、特定電子メールを送ってはならないと定めています。
- あらかじめ、送るよう求めた、または送ることに同意すると通知した人(第1号)
- 1号のほか、自分の電子メールアドレスを、送信者または送信を委託した者に通知した人(第2号)
- 1号・2号のほか、広告・宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある人(第3号)
- 1号から3号のほか、自分の電子メールアドレスを公表している団体、または営業を営む個人(第4号)
名刺を渡した相手は、このうち第2号に当たります。ただし、条件が付いています。
名刺などの書面でアドレスを通知した人は、第2号に当たる
施行規則(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則)第2条は、第2号の「自己の電子メールアドレスの通知」の方法を、書面により通知する方法としています。ガイドラインはこの点を次のように説明しています。名刺などの書面でアドレスを通知した場合は、書面を渡した側にも、受け取った者からメールが送られることについて一定の予測可能性があると考えられるため、書面による通知が規定されている、という説明です。
つまり、展示会のブースで、相手が自分のメールアドレスが載った名刺を渡してくれた場合、その相手は、名刺を受け取った会社に対して、第2号の通知をした人に当たります。同意をもらっていなくても、広告・宣伝のメールを送れる相手です。
ここで押さえておく点が3つあります。
- 通知の相手が特定されていること。ガイドラインは、通知の対象であるアドレスと、通知を受ける送信者の両方が特定されている必要があるとしています。自社のブースで直接受け取った名刺は、渡した相手と受け取った会社が分かります。一方、第三者から買った名簿や、他社のブースで集められた名刺は、この説明に当てはまるとは言えません。
- 主催者から来場者名簿をもらった場合は、別に確認する。ガイドラインは、第三者を通じて同意を取得する場合に、別の特定の送信者から広告・宣伝メールが送られる旨が表示されていなかったり、通常の利用者が認識できる表示になっていなかったりするときは、法律で定める同意の通知に該当しないとしています。主催者の申込画面で自社名が示されて同意されたものかどうかを、主催者に確かめてください。
- 書面以外で受け取ったアドレスは、別の扱いになる。施行規則第2条第1項は、第2号の通知を書面による方法とし、任意の方法でよいのは、第6条に当たるメール(契約の内容を知らせるメールに広告が付随する場合など)と、同意の通知を受け取るために送る1通に限っています。ウェブサイトの入力欄などで受け取ったアドレスは、第2号ではなく、第1号の同意を取れているかで考えます。
送ったあとの決まり|表示と、受信拒否への対応
送ってよい相手でも、次の2つは守る必要があります。
- メールに表示する事項(第4条、施行規則第9条)。送信者の氏名または名称、受信拒否の連絡を受けるメールアドレスなど、その連絡ができる旨、送信者の住所、苦情・問い合わせを受け付ける電話番号・メールアドレス・URLのいずれかです。
- 受信拒否の通知を受けたら、以後は送らない(第3条第3項)。通知の方法は、メールを含む任意の方法とされています(施行規則第5条)。展示会で名刺を渡した相手が「今後は送らないでほしい」と伝えてきたら、その相手には広告・宣伝のメールを送れません。
お礼だけのメールの扱いも、ガイドラインにあります。広告・宣伝の内容を含まず、広告・宣伝のウェブサイトへの誘導もしない時候の挨拶は、特定電子メールに当たらないとされています。一方で、自社の製品やサービスの案内、または案内のページへのリンクを入れたメールは、広告・宣伝のための手段として送られるメールに当たると書かれています。お礼メールに資料のURLを入れる場合は、上の表示事項も入れておきます。
この法律が定めているのは、電子メールの送信です。お問い合わせフォームへの送信の扱いは、フォーム営業は違法?クレームを防ぐ3つの運用ルールと安全な始め方で説明しています。
根拠にした資料は次のとおりです。条文は改正されることがあるため、実際に送る前に、最新のものを見てください。
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)
- 特定電子メールの送信等に関するガイドライン(総務省・消費者庁、平成23年8月、PDF)
- 消費者庁の特定電子メール法のページ
- 総務省の迷惑メール対策のページ
名刺にメールアドレスがある相手へ|会話した相手と、名刺だけの相手

A. 会話した相手:翌営業日までに、1人ずつ書く
会話した相手には、定型文を一斉に送らず、1通ずつ書きます。数は多くないので、手間はかかりません。入れる内容は次の4つです。
- 展示会の名前と、ブースで話した日(「◯◯展の2日目に、ブースでお話しした」)
- そのとき聞いた内容を一言(名刺に書いたメモをそのまま使う)
- 相手の困りごとに合う資料か事例を1つ。URLは効果測定URLにして、誰が見たかが分かるようにする
- 次の行動を1つ(「15分、オンラインでご説明します。来週の候補日は◯日と◯日です」)
メールの末尾には、前の章で書いた表示事項を入れます。件名の例を挙げます。
- 【◯◯展】ブースでお話しした件のご案内(株式会社◯◯ 山田)
- ◯◯展でのご相談について、事例資料をお送りします
B-1. 名刺だけの相手:2営業日以内に、どこで会ったかを書く
会話がなかった相手には、相手が自分のことを思い出せるように書きます。名乗りと、出会った場所を最初の2行に入れます。
- 書き出しは「◯◯展で、弊社ブース(小間番号◯◯)にお立ち寄りいただいた」と、名刺を受け取った事実から始める
- 展示していた内容を、一文で説明する
- 相手の業種に合う事例を1つ。長い説明は書かず、詳細は効果測定URLの先に置く
- 今後の案内が不要な場合の連絡先を、末尾に書く
B-1 は返信が少ない区分です。返信を待たずに、効果測定URLをクリックしたかどうかを、電話の対象を決める基準にします。電話番号の管理は電話番号管理、メールの状態の管理はメールアドレス管理で見られます。
メールアドレスがない名刺と、来場していない対象企業へ|お問い合わせフォームで連絡する

名刺には、会社名、部署、氏名、電話番号、住所だけが載っていて、メールアドレスがないものがあります。この名刺を、電話だけで追いかけると、電話に出た人に「担当者は不在です」と言われて終わりがちです。会社のホームページにお問い合わせフォームがあれば、そこから連絡できます。
B-2. メールアドレスがない名刺:会社名から、フォームのURLを探す
名刺の会社名から、その会社のお問い合わせフォームのURLを探します。件数が少なければ手作業でも探せますが、数百社になると時間がかかります。IZANAGI は、お持ちのURLからAIがお問い合わせフォームを取得し、送信します。フォームへの送信に失敗した場合は、メールでの送信に切り替えられます。
書く内容は、メールの B-1 とほぼ同じです。違うのは、フォームは担当者に直接届くとは限らない点です。そのため、本文の最初に、展示会の名前と小間番号を入れて、どの用件かをすぐ分かるようにします。
- 冒頭に「◯◯展の弊社ブースにお立ち寄りいただいた件」と書く
- 「ご担当者様」宛てにする(名刺の氏名がある場合は、その方宛てと書いてもよい)
- 展示していた内容を一文で書き、次の行動を1つだけ置く(資料のURLを見る、返信する、のどちらか)
- 末尾に、送信者の名称と連絡先を書く
C. 来場していない対象企業:出展者一覧と業界のリストから送る
展示会の出展者一覧には、自社と同じ業界、または自社の製品を必要とする業界の会社が並んでいます。来場していない会社でも、「◯◯展に出展されていた◯◯様へ」と書けば、連絡の理由が相手に伝わります。自社のブースに来ていないので、「ブースにお立ち寄りいただいた」とは書かず、事実のとおりに書くことが大切です。
- 「◯◯展に出展されていた貴社の、◯◯のお取り組みを拝見しました」と、出展者一覧で確認できる事実を書く
- 自社が展示で紹介した内容を一文で書く
- 展示会の資料を見られるURLを、効果測定URLで置く
フォームがある会社だけのリストの作り方と、反応率を上げる文面は、次の記事で詳しく書いています。
電話は反応があった相手に絞る|1週間の動かし方

展示会のあとの電話は、名刺の全員にかけると、時間が足りなくなります。かける相手は、次のどれかに当てはまる人に絞ります。
- A の会話した相手のうち、メールの返信がなかった人(メモで「導入時期が近い」と書いた人を先に)
- メールやフォームに返信があった相手
- 返信はないが、効果測定URLをクリックした相手
電話の最初の一言は、「先日の◯◯展でお話しした件で」「先日お送りしたご案内の件で」です。電話をかける理由が最初に伝わるので、用件の説明から始められます。返信が来た相手への対応は、フォーム営業で返信が来たらどうする?に4つのタイプに分けて書いています。
展示会の直後は、人手が足りなくなりやすい時期です。IZANAGI では、反応があった会社へのフォローコールや、テレアポの代行をオプションで案内しています。内容と料金は、お問い合わせで個別にご相談ください。
展示会後1週間の動かし方(例)
| 時期 | やること | 対象 |
|---|---|---|
| 会期の最終日の夜 | 名刺を A・B-1・B-2 に分け、メモを書く。C のリストを確定する | 全員 |
| 翌営業日まで | 1人ずつ、会話に触れた個別のメールを送る | A |
| 2営業日以内 | 出会った場所を書いたメールを送る。同じ日に、メールアドレスがない名刺にフォームで連絡する | B-1、B-2 |
| 3〜5営業日 | 出展者一覧・業界のリストへ、フォームで連絡する | C |
| 5営業日以降 | 返信・クリックがあった相手に電話する。A で返信がない相手にも電話する | A、反応のあった B・C |
| 1週間後 | 反応がなかった相手の区分を見直す。資料の差し替えや、次の案内の時期を決める | 全員 |
日数は目安です。展示会の会期や自社の体制に合わせて、前後させてください。大切なのは、B と C を A の後回しにしないことです。フォームやメールの送信は、人の手がほとんどかからないので、A の個別メールと同じ週に進められます。
展示会の費用を、1商談あたりで見直す
展示会の結果は、名刺の枚数ではなく、商談になった数で見ます。IZANAGI の配信結果レポートで、フォームの返信と効果測定URLのクリックを確認できます。名刺の区分ごとに配信を分けておけば、A・B・C のどの区分から商談が生まれたかを記録できます。その記録があれば、次の展示会で、ブースで名刺をもらうことに力を入れるか、C のリストの準備に力を入れるかを判断できます。
送信にかかる費用は、IZANAGI の場合、1通あたり1.25円からです。出展費に比べると、名刺や出展者リストへの連絡にかかる費用はわずかです。展示会の費用全体の見方は、営業代行の費用比較とテレアポとフォーム営業の費用対効果の比較にまとめています。
よくある質問
Q1. 展示会で名刺交換しただけの相手に、営業のメールを送ってよいですか?
相手がメールアドレスの載った名刺を直接渡してくれた場合は、特定電子メール法第3条第1項第2号の「自己の電子メールアドレスを通知した者」に当たります。ガイドラインは、名刺などの書面による通知を、この通知の方法として説明しています。ただし、メールには送信者の名称、住所、受信拒否の連絡先などの表示が必要で、相手から送らないよう求められたら、以後は送れません。詳しくは、この記事の「名刺を渡してくれた相手にメールを送ってよいか」の章を見てください。
Q2. 展示会のお礼メールは、いつまでに送ればよいですか?
決まった期限はありません。この記事では、会話した相手(A)は翌営業日まで、名刺だけの相手(B)は2営業日以内を目安にしています。相手が展示会の内容を覚えているうちに、会話の内容を書いて送るためです。
Q3. 名刺にメールアドレスが載っていない相手には、どう連絡すればよいですか?
会社のホームページのお問い合わせフォームから連絡できます。本文の冒頭に、展示会の名前と小間番号を書くと、何の用件かがすぐ伝わります。IZANAGI は、お持ちのURLからAIがお問い合わせフォームを取得して送信します。
Q4. 展示会のあとのテレアポは、名刺の全員にかけるべきですか?
全員にはかけません。会話した相手でメールの返信がない人、返信やクリックがあった人に絞ります。かける数が少ないほど、1社ごとに準備して話せます。
Q5. 主催者からもらった来場者名簿に、営業メールを送ってよいですか?
名簿の取得時に、自社から広告・宣伝のメールが送られることが、通常の利用者が認識できる形で表示されていたかどうかによります。ガイドラインは、第三者を通じて同意を取得する場合に、別の特定の送信者から送られる旨の表示がなかったり、認識できる形になっていなかったりすると、同意の通知には該当しないとしています。主催者に、取得時の表示を確かめてください。
Q6. 展示会に来ていない会社にも連絡してよいですか?
お問い合わせフォームからの連絡はできます。その際は、「ブースにお立ち寄りいただいた」とは書かず、「出展者一覧で拝見した」など、事実のとおりに書いてください。
Q7. 「今後は送らないでほしい」と言われたら、どうすればよいですか?
特定電子メール法第3条第3項により、受信拒否の通知を受けたあとは、その意思に反して広告・宣伝のメールを送ることができません。通知の方法は、メールを含む任意の方法です。連絡を受けたら、その相手を送信リストから外し、記録に残してください。
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